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叶山革砥 [革砥]

私が憧れた髭剃りとは、「シェービングカップとブラシを使い口のまわりをクリーミィな真っ白な泡で包み、まま革砥で刃をパシパシと整えカッコよく髭を剃る」のが理想だ。

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理想通りには成っておらず、全く不満なのだ。

問題は革砥だ。キレッキレの刃にするにはラッピングを革砥以外に求め無くてはならず、ラッピングフイルム#15000 や 最近はダイアモンドペースト#100000なんぞも試し駆使している、確かにキレッキレの刃が付き良く剃れるが、大切なのはそんなコトでは無い理想のスタイルとはほど遠いのが現状だ。

何故なのか? 髭を剃る度に気になっていて、ズルズルと解決しない無いまま1年が過ぎようとしている「革砥」 に問題が有るからなのだ。
自己流で革砥の手入れを良かれと思えるコトは全てやり、どうだこれで完璧だろうと思ったりしたが、いかんせん中古と新古の何年モノか分からない革砥だ、詳しい知識も無くコレで正しいのか間違いなのかが判らないのに革砥の能力を疑ったりしていた。

前に、岩崎航介氏著の「 革砥の手入れ方法 」を運良く入手したが、何度読み返しても革砥の手入れ方法が余りに大変そうなので、ましてや文面だけで手順図解も写真も無い、むむむむ!このままでは理想的なシェービングは出来そうにない。他所様のブログで新品の革砥をゲットされた方のコメントは「コレ以外の革砥は全てお蔵入り」的な文面だったと思うが、この1文がズ〜っと引っかかっていた。

「やはり、新品を使ってみたい!」ならば!と、現在使っている革砥と西洋剃刀を6丁ケースに入れて、家から車で1時間もかからない浅草にある日本唯一、いや今となっては世界唯一の西洋剃刀、ストレートレーザー用のコードバンによる革砥を製作する叶山革砥製作所 (カノヤマコードバン) へ伺い確かめるコトにした。

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入り口には紙にマジックで大きく カノヤマ と書かれていて画鋲でとめてあった、それ以外は看板もなんにも無い。だが、遠くからでもすぐに分かった、なんせ、建物のペイントが 革砥を吊るした柄 に私は見えたからだ。(すでに舞い上がりトチ狂ってる)

80歳を越えられた世界唯一である革砥職人 直海 義則 (ナオミ ヨシマサ)氏にお会いするコトができ、2時間近くいろいろとお話ができた。( 叶山、カノヤマ とは屋号である )
実際は聞きたいことの10分の1も緊張で聞けなかったが、伝説の人と夢のような時間を過ごさせて頂いた。

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まず聞きたかったのは、「革砥だけでキレッキレになるのかどうか?」と、持参した私の革砥で問題無いかどうかだ。

革砥を手に取り、答えは、「革砥が良くないと切れません」だった。ふむ、やんわりと持参品は不合格であるコトが伝わった。

革砥に箔型押しされている数字、その番手違いは何の意味が有るのか?

直海氏曰く、「 革の厚みの違い 」とキッパリ。白く長い革砥の入った箱から、同サイズ(68×600)の #10000・#30000・#50000 の 3種と 革砥サイズが大きく、今後この番手は作らないと言って後から出してきた大きな #40000番(70×665) の4種で革砥のクオリティの違いを仕入れの段階の革から分かりやすく説明してくれた。

コードバンをドラム式の洗濯機のようなものに40℃のお湯とオイルを入れて革の厚さによって、2〜3時間程しなやかに成るまで回すのだそうだ。
そこからサンドペーパーの800番、機械式のグラインダーでなめして行く、どんどん細かく番手を上げて表面を滑らかにしなやかに、コレも2〜3時間かかると言っていた。大変な作業なんだと言っていた。
靴屋と違って、コードバンに裏革を当てて厚みを出すコトはしないし、財布などの小物などに使うコードバンと違い、革砥は大きいので仕入れた革によっては革の部分が均等で無く全てが使えなかったりと大変みたいだ。
カノヤマコードバンの番手は、厚さが全て均等でクオリティの良いコードバンであればある程数字が大きい番手と成る。つまり、厚みが一定で大きい程良いモノと成り番手が大きくなり価値も高く成るというコトなのだ。

直海氏は、「だが数字の番手が小さくとも、しなやかな革砥で剃刀を仕上げれば、剃刀の切れに差は出ない、どの革砥も一生懸命作っている」と言っていた、真面目な根っからの職人なのだ。

ここ数年良いコードバンがなかなか手に入ら無いと嘆いておられた。

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新品のしなやかな白い牛革の荒砥と呼ばれる革砥も見せてくれた、今は牛革しか作ら無いが以前は馬革で荒砥を作っていたそうだ。

実際は、布砥と馬(牛)の表革の革砥(荒砥)とコードバンの革砥の3本で仕上げると良いみたいだ。

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私の革砥#30000(64×650) の仕上げを見てもらった時に驚くコトが分かった。
私の革砥を見た直海氏は 「この革砥は私が作った物だ、ホラ 直海 って名前が入ってるだろ」 、、、どこどこ? ホントだクロスの中にアルファベット横書きでNAO、縦にMI  NAOMIと読めた! ビックリした。
ずいぶん前の革砥だね、革が良かった時代の物だフックも止め金具のネジもランクの良い物が使われているから。と、言うコトは、刻印が同じ私の手持ち革砥2本はナンとカノヤマ製だったのだ。私の#30000は布砥エンドの革も縫い付けており当時かなり品質高いモノだったみたいだ。布砥エンドの革は今はのり付けしかやってないらしい。

今の刻印はLLAMA印と丸いKANAYAMA印と月桂樹に番手数字の3つの刻印モノしか作ら無いと言っていた。(刻印は40種類位有るそうだ) CAUTION!と英文がズラズラ出ている箔押しも有るが、何が書いてあるのか覚えちゃいないし、分から無いと言っていた、当時はそんなモノだったらしい。私も翻訳したが英文がまともで無いのである程度しか分からなかった。

この(浅草)界隈は革屋が多く、革砥屋も10軒以上あったがウチ以外無くなった。弟子になりたいとTVに出てから何人か訪ねてきたが全て断った、そんな甘いもんじゃない。確かにそう思ったし伝わった。

叶山革砥、カノヤマコードバン 現在唯一 半世紀以上コードバンでの革砥作りをしている直海義則氏がこの番手はもう作らないと言っていた貴重な#40000番を手に入れ、今後私もこの革砥以外使わない等と言うのだろうね。


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七丁目のボステリ

百聞は一見にしかず、実際に行かれると色々わかりますね。

高価で使うことは難しいですが、
実は革砥について色々考えていたことがあり、
記事は参考になりました。

革砥の使い方は難しそうですが、今後の記事を期待してます。

by 七丁目のボステリ (2015-06-19 06:05) 

ヨシヒロ

とうとうコメントしてしまいました!?
僕もカノヤマ愛用者でやはり他とは別物だと思います。
レザー用の従来の物とは別に日本剃刀用に卓上型も作ってもらって愛用しています。同じように番手は厚みとの説明を受けて、気にすることは無いという事で今だに卓上型の番手は判りません。

先日も仲間と叶山コードバンを訪ねる計画をしていました。
僕も自分のコードバン持参で手入れを指導してもらう予定でしたので、羨ましく思います。
その後の使用感レポート楽しみにしています。
自分も最終的に革砥仕上を目指していますが、ダイヤモンドペーストに完敗状態で不満です。
by ヨシヒロ (2015-06-19 07:55) 

Yan-tan

コメント、有難う御座います。
先程、1週間位の革砥使用感アップしましたが、新品が良いのか手持ちの革砥がダメなのかはわかりませんが、直海氏の私の革砥を触った感じで発した言葉はストレートでは無かったですが、私の手入は不合格だったと感じております。
実際使ってみて天と地というのか、革砥そのモノが違うと感じました。
ヨシヒロさんは卓上革砥を特注されたみたいで、ソレは旅に持っていけるコンパクトな革砥何でしょうか? 革砥といい素晴らしいモノをお持ちですね。私も出張が多く持ち運べる簡易的な革砥を探しており、羨ましく思いました。
今後とも宜しくお願いします。



by Yan-tan (2015-06-20 19:13) 

ヨシヒロ

卓上革砥ですが「幅はレザーの幅、長さは20㎝程欲しい。砥石程度の木材に巻いて使うかも。」と頼んだのもあってか30㎝x15㎝の大きさでした。
厚みですが50000番の革砥の半分程度のようです。

巻いて使うと曲げた角が盛り上がるのが気になり、机に置いて使っています。
正直、従来型より使いやすいです。特に日本剃刀は革砥にねじれや弛みが有ると、顎の部分が引っ掛かりやすいので置いて使った方が安心です。
技術が無いと言えばそれまでかもしれませんが、革砥を傷つけてしまい泣けてきました。

こちらこそよろしくお願いいたします。
by ヨシヒロ (2015-06-20 20:45) 

仁淀の小鮎

ダイヤモンドペーストは最早#200000ですよ~、ジーンズ戸石以外の物も有りますね(^^♪
by 仁淀の小鮎 (2015-08-07 18:24) 

たかさん

興味深く読ませていただきました。亡き父が使っていた剃刀が30年ぶりに出てきました。昭和39年製の菊王冠の玉鋼でした。中野製作所さんに研ぎをお願いしたところ、中野製作所さんも大変珍しい骨董品が出てきたと驚いておりました。このような剃刀ですから、メンテナンスをしながら使いたいと思い、皮砥に辿り着きました。貴方様のブログを拝見して、大変勉強になりました。叶山さんの皮砥はまだ手に入るのかと思い質問させていただきました。よろしくお願いします。
by たかさん (2021-04-28 10:32) 

志摩勝利

ご担当者様

お世話になっております。
一広クロスの志摩です。

弊社の持ち枠でTVCM枠の空きがございまして困っております。
なんとか一枠お付き合い頂けないでしょうか。
「ノンストップ!」は、平日のお昼頃に放送されているフジテレビの関東ローカル番組になります。
是非御社のブランディング、知名度拡大に使っていただければと思います。
下記詳細になります。ご確認頂けると幸甚です。

□ノンストップ!https://www.fujitv.co.jp/nonstop/
放送局:フジテレビ
エリア:関東ローカル(東京都、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、神奈川県)
放映 :2022年1月~
曜日 :火曜日
金額 :月額160万円【税抜】 単価40万円(税別)  
※単月だけでもお願いいたします!

■企画書はお手数おかけしますが、以下よりDLをお願い致します。
https://app.box.com/s/wgo2i71d1708m7jpofozbo8hrkgzu5ld

放送素材に関しましてはご相談ください!
急なお願いで申し訳ございません。
何卒、何卒よろしくお願い致します。
by 志摩勝利 (2021-10-24 00:30) 

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